の場合、3年の消滅時効と異なり、被害者の認識のいかんを問わず、20年という期間の経過によって法律関係が確定するが、除斥期間の主張が信義則違反又は権利濫用として許されないときは、被害者の救済が図られることになる。
さらに、民法改正法は、20年の期間が民法改正法の施行の際既に経過していた場合におけるその期間の制限については、なお従前の例による旨を規定し(附則35条1項)、それまでに形成された法律関係はそのまま維持されるものとしている。改正前民法724条後段の期間を除斥期間とする法理についてまで判例変更を した場合には、民法改正法の施行までの間に消滅したものと認識されてきた請求権について、改めて、時効に関する諸規定によってその存否を確定すべきことになるが、民法改正法がこのような法律関係の遡及的な見直しを意図したものとは解されない。
(3) 判例の変更は、法の安定と発展の両面に関わる問題であるが、以上に鑑みると、長期にわたって加害者に対する損害賠償請求をしなかったことに真にやむを得ない事情がある場合にも被害者の救済を図るという改正後民法の趣旨等を踏まえても、本判決による判例変更の点に加え、除斥期間という期間の法的性質の点についてもこれを改めることが相当とまではいえない。
2 本判決を踏まえた国の対応等について付言する。
本件は、立法府が、非人道的かつ差別的で、明らかに憲法に違反する立法を行い、これに基づいて、長年に及ぶ行政府の施策の推進により、全国的かつ組織的に、極めて多数の個人の尊厳を否定し憲法上の権利を侵害するに至った被害の回復に関する事案である。
国は、本件規定が削除された後も長年にわたり、被害者の救済を放置してきたものであり、一時金支給法による一時金の支給も、国の損害賠償責任を前提とするものではなく、その額も十分とはいえない。また、これまでにその支給の認定を受けた者は、不妊手術を受けた者の総数に比して極めて低い割合にとどまる。