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Page:Ruling on eugenics law osaka1.pdf/18

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このような状況において、平成元年判決等が示した法理が今日まで維持されてきたことは、国が損害賠償責任を負わない旨の主張を維持することを容易にするなど、問題の解決を遅らせる要因にもなったと考えられるが、国が必要な立法措置等により被害者の救済を図ることが可能であったことはいうまでもない。

これらの事情に加え、被害者の多くが既に高齢となり、亡くなる方も少なくない状況を考慮すると、できる限り速やかに被害者に対し適切な損害賠償が行われる仕組みが望まれる。そのために、国において必要な措置を講じ、全面的な解決が早期に実現することを期待する。

裁判官草野耕一の補足意見は、次のとおりである。

私は多数意見の結論及び理由の全てに賛成するものであるが、多数意見が、第1審原告らの本件請求権の行使に対して上告人が除斥期間の主張をすることは信義則に反し、権利の濫用として許されない旨述べている点(以下、これを「本意見」という。)に関して補足して意見を述べておきたい。というのは、本意見はそれ自体として十分に説得的であるとは思うものの、改正前民法724条の立法趣旨について考察を深めることによって一層説得的なものになるように思えるからである。以下、そう思う理由を敷衍する。

1 最初に改正前民法724条自体の意義について考える。この点については様々な捉え方が可能であるとは思うものの、私の見るところ、同条が保障せんとする中核的利益は次の二つに収斂するのではないであろうか。

(1) その第1は、不法行為をしたとされる者が、不法行為をしたと認定される可能性がもたらす心理的・経済的コストを負担し続けることによって人生の善きあり方を構想しその実現を図る自由を妨げられることのない利益(以下「自己実現を妨げられない利益」という。)を保障することである。なぜならば、①改正前民法724条が存在することによって確実に利益を得るのは不法行為をしたとされる者だけであり、一方、②不法行為をしたとされる者といえども、限りある人生をより善