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3 棄却審証人〔乙33〕の供述記載および領置にかかる書簡二四通の各記載によれば、〔己〕は前記のとおり秋田刑務所拘置場に留置されていた頃から、自分の罪深い過去を反省し、キリスト教にその救いを求め、偶々知り合つた修道女〔乙33〕との間に文通を重ね、その間本件をにおわせるような「このまま打ち明けないでかくし通したとき死後の運命はどうなるか」といつた質問を出して教えを乞い、贈られた聖母マリヤの像を肌身離さず持つて朝晩祈りを捧げ、昭和四六年三月一一日宮城刑務所を出所するまで、この文通は続いていたことが認められる。
4 棄却審および異議審証人〔乙26〕の供述によれば、〔己〕が服役中の昭和四六年二月頃宮城刑務所内病舎に入所していた折、同じ病室にいた〔乙26〕らに対し、本件犯行の真犯人が自分であることを告白したことが明らかである。
5 以上によれば〔己〕が告白までの経過として、自分に代つて那須隆が無実の罪で服役していることに悩み、秋田刑務所拘置場に留置されていた頃からキリスト教に救いを求め、修道女と文通を重ねて教えを乞い、遂に宮城刑務所を出所する間際の昭和四六年二月頃同刑務所内病舎に入所中同じ病室にいた〔乙26〕に自分が真犯人であることを告白したと述べているところは、すべて証拠によつて裏付けられるのであり、告白の動機に必ずしも不自然な点は認められない。
四、まとめ

 検察官は〔己〕の供述の信憑性に深い疑惑の念を抱いているが、かりに〔己〕が全く本件にかかわりのない人間であるとすれば、その供述するところはすべて虚偽架空の事実を供述していることになるのであり、