Page:Retrial judgement of Hirosaki incident.pdf/63

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(ロ) (強姦致傷)同年五月六日午後九時三〇分頃ダンスホールに入場するにあたり、その料金に窮して、同市大字下鞘師町において屋台店から売溜金を窃取しようとしたが、店番をしていた当時二一才の女性が、容易にその隙をみせないと知るや強取を決意し、矢庭に同女の背後から抱きついてねぢ倒し、同女の首をしめたりした上、所携の匕首で同女の右頸部および右腰部に切りつけたところ、同女が救を求めたため現金強取の目的を遂げなかつたが、同女に対し右暴行により右頸部等に治療約一か月を要する傷害を負わせ
(ハ) (建造物侵入、強姦致傷)同年七月二一日午前零時頃姦淫の目的をもつて同市大字本町所在の弘前医科大学附属病院看護婦宿直室に侵入し、就寝中の当時二四才の看護婦を姦淫しようとして、同女に対し押し倒したりする暴行に及んだところ、同室の看護婦に叫ばれたため、姦淫の目的を遂げなかつたが、右暴行により所持していた鋭利な刃器で、右被害者の右膝蓋部等に全治一〇日間を要する切創を負わせ
(ニ) (建造物侵入)同年九月一一日午後二時頃看護婦を姦淫する目的で右病院内に侵入した
というものであつたことが認められる。即ち〔己〕がその頃ヒロポンを常用する不良の徒輩で、夜半凶器を所持して街中を歩き回つては、女性に襲いかかる性癖を有し、かつ凶暴な性格の持主であつたことは明らかである。そして〔乙2〕の検察官に対する昭和二四年八月三一日付供述調書、前記実況見分調書の各記載によれば、本件犯行によつて被害者の下着が乱された形跡は全くなく、また家の中を物色された形跡もなかつたことが明らかであるから、以上の諸事実を総合すれば〔己〕が動