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とができる。

  なお原一審検証調書の記載によれば、〔乙〕方表門前の路上血痕のうち一点は門前の橋から北方約二・七二メートルのところに滴下していることが明らかである(別紙図面㈠参照)。これは〔己〕が上申書の中で「自分がこのように遠回りして自宅に戻つたのは、警察犬を使つてにおいを追跡されるという心配が瞬間的に頭にひらめいたからである。」と述べているところから窺われる、〔乙〕方門を出て北に行きかかつたが、思い直して南に方向を変えて逃走した状況を彷佛させるものがある。
7 被告人方周辺の血痕と供述の関係

 この点については、〔乙10〕方玄関前敷石上および被告人方裏より通じる〔乙29〕方裏の漬物石上の各B型の人血痕ならびに〔乙10〕方潜り戸の敷居に発見された人血痕がいずれも被害者の血液に由来するものでないことは前記第一、一、㈢において説示したとおりである。したがつて〔己〕が木村産業研究所を出て、「右方(北方)へ進み、突き当つて左方(西方)へ折れ、那須方前を通つて茂森町に出た」「木村産業研究所のほかには、途中立ち寄つたところはない」と供述しているところは、証拠上も何ら矛盾が認められない。

8 その他の状況と供述の関係
⑴ 〔己〕の供述中「本件犯行の一〇日か二週間位前に〔乙〕方二階でミシンを修理したことがあり、その折二二、三才位の娘が二人いた」ということについては、〔乙30〕(昭和六年九月一八日生)の