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判所は次のとおり判断する。
 殺人の点に関する事実誤認、理由不備の主張について。
 所論は本件が殺人事件であることは証拠上明らかであり、その犯人が被告人であることは、以下挙示する各証拠によつて明白である。即ち直接証拠として、⑴被告人が本件発生当時着用していた海軍用開襟白シヤツに被害者〔甲〕の血液型と同じB、M、Q、E型の血痕が附着しており、被告人の血液型はB、M、q型である。⑵被告人がその頃常に履いていた白ズツク靴に噴出飛散したと思われるB型の人血痕が附着している。⑶被害者〔甲〕の居宅である〔乙〕邸内より同家大門出入口附近、その前の道路上、〔乙9〕方前道路上を経て木村産業研究所前道路に至るまでB型の人血痕があり、更に被告人方隣家の〔乙10〕方小門内外、同人方玄関前敷石上にもB型の人血痕、右〔乙10〕方と被告人方との境界垣根の笹の葉に人血痕が附着しているが、これらの人血痕は犯人が逃走の際犯人自身からか或は犯人の携行した物件から血液が滴下して生じたものと考えられる。尚警察犬も〔乙〕方邸内より血痕のある道路を進み、〔乙10〕方近くまで行つている。⑷被害者の実母〔乙2〕のみた犯人は被告人に酷似している。⑸弘前市在府町〔乙11〕は本件の発生した昭和二四年八月六日夜同人方居宅において白いシヤツを着た男が同人方前道路上を木村産業研究所から〔乙10〕方の方へ駈けてゆくのを現認している。更に状況証拠として、⑴本件の発生した日の夜被害者宅附近で被告人に似た、被告人の歩き方に酷似した男に出会つているものが数人おり、本件発生の翌朝の被告人の行動には不可解なものがある。⑵凶器は大型ナイフと思われるが、そのようなナイフを被告人が所持していたのをみた証人がおるにも拘らず被告人はこれを否定している。⑶本件は変態性慾者の犯行と思われるが、被告人にはその傾向が認