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婦人のそれと同様の状態であつた)との状況は、証拠との関係においてよく一致するばかりでなく、右窓下の繁つた草の上に窓から室内を覗く際に踏みつけたと思われる足跡が薄く残つていた状況は、〔己〕の供述の信憑性を裏付けるに十分である。したがつて〔己〕が室内を覗くとき、カーテンに手をかけたか、或はカーテンの隙間からみえたか、の点の情況について同人に記憶がないとしても、左程信憑性に影響を及ぼすものではない。棄却審証人〔丙4〕、同〔丙5〕の各供述中右認定に副わない部分殊に〔丙5〕証人が、室内における人の有無を確認するだけで三分間以上を要したと証言するところは、原二審検証の結果と著るしく相違して採用し難く、むしろ〔己〕の供述の方が、当時の明暗の状況によく合致すると思われる。

3 引き戸の施錠と供述の関係

 次に〔己〕が縁側南側の引き戸の施錠につき供述するところを検討する。
 前記実況見分調書、〔乙2〕の検察官に対する昭和二四年八月三一日付供述調書、原二審証人〔乙2〕の尋問調書の各記載および前記原一審検証における同人の指示説明によれば、引き戸の錠は差込みのうえ、ねじつて締める構造のものであつたが、単に差込まれただけでは、戸を一寸かかえ上げたりすることにより、音もたてずに開けられること、犯行当夜は引き戸の錠は〔甲〕においてかけたものと思われ、〔乙2〕も同錠が差込まれてあることに記憶はあつたが、すつかり差込まれ、ねじつて締めてあつたか否かについては記憶がないこと、警察官の見分の際、当夜は右錠が差込まれてあつただけのように窺われたことが認められる。