Page:Retrial judgement of Hirosaki incident.pdf/39

提供:Wikisource
このページは校正済みです

板)で上は硝子が入つていた。引き戸の前には踏み石があつたと思う。引き戸を開けたところ、そこは縁側になつていた。縁側は板敷であつたような気がする。

7 そこで縁側に膝をつけ、左手に凶器をもち、ズツク靴を履いたまま、這うようにして三、四歩進んだら敷居のようなところがあり、そこからすぐ座敷で、蚊帳が吊つてあつた。蚊帳までは障子その他の障害物はなく、すつと行けた。
8 そこで蚊帳の縁側寄りの裾の真中あたりを少し身体が入る位あけて、伏せるようにして中に入つた。一番手前に被害者が寝ていたが、同女の頭の位置は右敷居から約五〇センチメートル北方、西の壁から約一メートル東方の附近であつたと思う。蚊帳に入つた際には、被害者の北隣りに子供が寝ていたことには気が付かなかつたと思う。
9 被害者は上を向いて寝ていた。その服装は記憶がない。自分は同女の首から腰までの間の右横に、右膝は左膝よりやや同女に近づけてしやがみ、同女の上に屈みながら左手で(その頃凶器は自然に右手に持ちかえていた)、同女の乳房のあたりをすつと触れたら、同女が目を覚ましたように、ぐつと動いたように感じたので、咄嵯に気付かれたら大変と思つて右手の凶器で同女ののどをぐつと刺した。刺すときには凶器を逆手に持ち、刃を自分の方に向けていたが、刺した箇所はのどの真中辺かどうかははつきり判らない。ただ、垂直に突き刺したつもりであつたが、同女が左の方(北方)へぐつと首をねじつたので、さらに頸部が切れ、そのときに水が流れるように「ゴボゴボ」というような音がした。