Page:Retrial judgement of Hirosaki incident.pdf/38

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はなかつたと思う。

4 〔乙〕方へは表門わきの潜り戸から入つた。潜り戸には錠がなく、そこを通りながら腰のバンドの内側に挾んであつた前記の凶器を取り出し、鞘代りに巻きつけてあつた布切れを取り去つて、これをズボンのポケツトに入れ、凶器を握持してまず表門のほぼ正面(西方)の勝手口に向つたが、それはミシン修理に赴いた際、勝手口から入つたからである。しかし勝手口には錠がかかつていて入れなかつたので裏手へ廻わろうとして表門の方に戻り、東側道路に面した庭の方に来た(別紙図面㈠参照)。
5 すると原判示犯行現場である離座敷の一階東側窓の下に差しかかつたので、同所に生えていた草の上に立ち、爪先立つて座敷の中を覗いてみた。その頃自分の視力は一・五であつたが、部屋の中は薄暗く、右方(北方)はぼやつとしてよくみえなかつたが、三〇秒位覗いているうちに、自分の前方に頭を向う側、足を手前側にして寝ている人(被害者)の頭の部分がみえ、その者が頭の恰好から女と判つた。当時、被害者と会つたこともなく、もとより同女を目あてにして来たわけではなかつた。覗いたときは、窓のガラスを通してであつたかどうかは記憶がない。多分夏だから窓は開いていたのではなかろうかと思う。また部屋に電灯がついていなかつたように思うが、はつきりした記憶はない。覗いたときに蚊帳が吊つてあることに気付いたかどうかも記憶がない。
6 それから同女の身体に触れてみたいと思い(姦淫するまでの意思はなかつた)、南側にまわり、大きな四枚戸位の引き戸のあるところに来て、その東側から二枚目の戸の腰板の部分に手をかけて横に引いたら、錠がかかつておらず開いたので、身体が入る位開けた。右引き戸は下の方が板張り(腰