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センチメートル位、非常に切れそうであつて、罐切りなどがついているような恰好のもので大変に立派なものであつたというのである。また原一審証人〔乙21〕は、昭和二〇年頃被告人が大型ナイフを持つているのをみたが、それは畳んであつて長さは四寸位、罐切りなどがついていたようで、柄の木部は焦茶色、木部の上の金属部分は錆びていたが、端の方に鎖がついていたと供述し、原一審証人〔乙22〕は、昭和二〇年一一月頃被告人が折込み式のナイフを持つているのをみたが、それは片刃で刃の先端は丸味を帯び、その切先きから柄のつけ根までの長さは約三寸五分ないし四寸位、刃巾は約八分、ビールの栓抜きもついていたが相当錆びていて特に良いものとは思わなかつたと供述し、被告人が前記推定の刃渡り、刃巾に副う折込み式ナイフを所持していたのをみた証人のいることは所論のとおりである。しかし被告人の司法警察員に対する昭和二四年九月七日付、同月八日付、検察官に対する同月一九日付、同月二七日付、同月二九日付および同年一〇月一日付各供述調書の記載によれば、被告人は捜査官に対する取調において、大型ナイフを持つていたことはないこと、しかし妹〔丁4〕から昭和二三年五、六月頃貰つた折込み式のナイフを持つていたことはあるが、それは同女が弘前の師団司令部の参謀長の給仕をしている時に参謀長から貰つたもので立派なものである旨述べているのであつて、被告人は別に検察官が主張するように証人のみたナイフの所持を全面的に否定していたわけではない。

㈢ 被告人の変態性慾的傾向について

 検察官は、本件が変態性慾者の犯行であるという仮説を立てているのであるが、この仮説自体合理性に乏しい。被告人の司法警察員に対する昭和二四年八月二三日付、同月三一日付、同年一〇月一三日付、