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と結びつかない本件では、何ら犯人を特定・立証するに足る証拠となるものではない。

二、次に状況証拠についての考察
㈠ 目撃者について

 検察官は目撃者として、原一審証人〔乙12〕、同〔乙13〕、同〔乙14〕、同〔乙15〕、同〔乙16〕、同〔乙17〕、同〔乙18〕を挙示しているが、右各証人の供述するところは、その男は内股であつたとか、白シヤツ半ズボンを着て白ズツク靴を履いていたとか、丈は五尺四寸位、肩のなで型の恰好は被告人に似ているとかいう程度であつて、被告人であると特定できるには程遠い状況である。そして被告人が本件の発生した翌日即ち昭和二四年八月七日早朝〔戊〕寺の墓地にきたのを目撃したという原一、二審証人〔乙19〕の証言は、日時の点で記憶が明確でなく、所論のような翌早朝の被告人の行動が不可解であるとする点の証拠になりうるものでない。

㈡ 凶器について

 鑑定人木村男也作成の鑑定書の記載によれば、本件犯行に使用された刃器は、片刃の鋭利なもので峰の厚さは二、三ミリメートル前後、刃巾は一センチメートルから一・五センチメートル、精々二、三センチメートル位まで、刃渡りは七、八センチメートルから一五センチメートル位と推定していることが認められる。原一審証人〔乙18〕の供述記載によれば、昭和二三年秋頃〔乙20〕方で被告人が大型ナイフをズボンのポケツトから出したのをみたことがあるというのであるが、そのナイフは折込み式で白い細い金属性の鎖がついており、片刃で柄の長さも刃渡りと同じ位か、それよりも長い位で、刃巾は一・五