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値を認めることはできない。

㈣ 被害者の実母〔乙2〕の供述について、
1 〔乙2〕の司法警察員に対する昭和二四年八月八日付および検察官に対する同月三一日付各供述調書の各記載、原一審証人〔乙〕、原一、二審証人松永藤雄および同〔乙2〕の各供述記載によれば次の事実が認められる。
  被害者〔甲〕(本件当時二九才)は夫松永藤雄の転勤にしたがつて昭和二二年六月頃から長男(本件当時八才)およひ長女(同四才)を伴い、〔乙〕方二階離座敷に移り住むようになつたが、〔甲〕の実母〔乙2〕(当時五九才)は昭和二四年八月一日その居住地の桐生市をたつて翌二日に右被害者方に着き、三日に夫藤雄は長男を連れて所用のため酸ケ湯温泉に約一週間の予定で赴いた。
  本件の発生した同月六日は夫がいまだ留守中で、被害者と〔乙2〕および長女の三名は、入浴後午後一〇時前後頃に離座敷階下八畳の間に蚊帳を吊り、南から順次被害者、長女、〔乙2〕の順で枕を西、足を東に向けて床についた。そして蚊帳の中央部の上にある二燭光の水色の豆電球はつけたままとし、蚊帳の上に新聞紙二枚を置いて右電球の明りが長女のところだけに差し、〔乙2〕と被害者のところには来ないようにしていた。そして本件の凶行はその後間もなく発生し、犯人を目撃したのは〔乙2〕ただ一人であつた。
2 原一審証人〔乙2〕は、犯行時にみた犯人は被告人に間違いなく、面通しでみたときには、被告人が犯人と全く同じであり、卒倒するように感じたほどであつたと供述する。そして同証人は検察官に