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対し、前記引田鑑定、〔丙3〕・平嶋鑑定は血痕であることの証明すらできなかつたことに鑑みまた前記古畑鑑定の結果に照らし、右松木・〔丙〕鑑定はたやすく信を措き難いものがあるといわざるをえない。当審において始めて提出された鑑定人松木明の昭和二四年一〇月四日付鑑定書の記載によれば、靴紐についている斑痕は人血である、靴両底および右靴の上にある斑痕はいずれも血液であるという鑑定結果を出しているが、右鑑定は同年八月二〇日(本件白靴が領置された以前の日付である。)および同年一〇月四日の二回に亘り実施したとあり、血液と思われる各斑痕を切り取り検査したものの如くであるが、それがいつの時点でなされたものか詳らかでなく、右靴の上の斑痕についても切り取り検査したのは右靴の右上側とあるから別紙図面㈤のア点に相当すると思われるのであるが、同鑑定人がその後実施した鑑定では、右靴の人血はウ点のみであつたことは前記説示のとおりで、右鑑定書には日付を始め内容においても矛盾しかつ杜撰な点が多く認められるので前記認定を妨げるものではない。

3 これを要するに本件白靴に附着した斑痕の存在をもつて、本件の罪証に供することはできないことが明らかである。
㈢ 被告人方周辺の血痕について
1(イ) 司法警察員作成の昭和二四年八月八日付報告書二通および領置調書二通、鑑識係技手〔丙〕作成の同月一八日付「図面作成の件」と題する書面、同「血痕滴跡状況図面作成について」と題する書面(以上二通の書面を以下〔丙〕書面二通と略称する。)、被告人の検察官に対する昭和二四年九月