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(赤みのあるねずみ色)と赤みがかつた鈍い紫色(赤ぶどう酒のような色)との間の色といい、証人〔丙〕はあかるい紫(藤色)とあかるい赤紫(つつじ色)との間の色かまたはあさい紫(紅藤色)と紫がかつたピンク(薄紅色)との間の色であつたと証言し、三者三様の色合いを供述しているのである。本来同じ色合いの印象であるべき筈のものが、前記色名帖に照らし三者の色合いに濃淡の相違があるということは解せないことである。

 このようにみてくると、本件白シヤツにはこれが押収された当時には、もともと血痕は附着していなかつたのではないかという推察が可能となるのであり、そう推察することによつて始めて前記⑴ないし⑶の疑問点即ち被告人が右シヤツを平然と着用していたことも疑問でなくなり、「噴出」または「迸出」血液の附着が不自然であるという疑問点も解消し、色合いの相違という重大な疑問も氷解する。
 要するに血痕の附着を前提とする限り叙上の各疑問点を解明する必要があり、この解明ができない以上疑問を止めたままこれを事実認定の証拠に供することは許されず、また確率の適用もその前提を欠き全く無意味となるのであるから、結局本件白シヤツ附着の血痕をもつて被告人の本件犯罪を証明する証拠に供することはできないといわなければならない。
㈡ 白ズツク靴(以下本件白靴という)の血痕について
1 司法巡査作成の昭和二四年八月二二日付領置報告書、同日付領置調書、被告人の司法警察員に対する同日付、同月二七日付、同月二八日付、同月二九日付および検察官に対する同月二五日付、同年九