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 したがつて以上の各判定結果を総合すれば、被害者の血液型はB、M、Q、E型であることが認められる。
 他方被告人の血液型が前記三木鑑定によりB、M、q型と判定されていることは所論指摘のとおりである。
4 してみると本件白シヤツには、B、C、F、I、J、Kの六点の各斑痕において、被告人の血液ではなく被害者〔甲〕の血液型と同じB、M、Q、E型の、しかも附着時期において本件犯行時と時期的に矛盾することもないと推定される「赤褐色」の血痕が附着していることが明らかであるというべく、かかる場合前記古畑鑑定によれば、本件白シヤツ附着の血痕と前記畳表附着の血痕が同一人の血液である確率は、べイーズの定理を応用すれば九八・五パーセントという極めて高い確率をもつて推定されることが認められる。
5 叙上認定の事実を総合すれば本件白シヤツ附着の血痕は、本件凶行の際「噴出」または「迸出」した被害者の血液が附着したのではないかという疑いが極めて強いといわなければならない。
6 しかしながら右推定にはいくつかの疑問点が存在するので、以下その疑問点について考察する。
⑴ 先づ前記古畑鑑定によれば、本件白シヤツに附着していた血痕は、前記畳表に流出した被害者の血液と同じ「赤褐色」を呈した血痕であつたというのであるから、被告人は被害者の返り血を浴びた本件白シヤツを、逮捕時までそのままの状態で着用していたことになるのである。しかも被告人はそれを家宅捜索にきた警察官の面前で何ら悪びれることもなく脱ぎ捨て、他の衣類と着替えたう