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の謗りを免れない。

6 那須のアリバイ工作について

 この点について那須が本件犯行に関してアリバイ工作を図つたと認め難いとした原審の認定は首肯できる。

7 〔乙10〕方および那須方附近の血痕

 この点については本件犯行に由来するものでないと解すべきものであることは前記のとおりである。

8 まとめ

 以上これを要するに、原二審判決が那須に対する本件殺人事件につき有罪を認定するに至つた事実と証拠との関係を仔細に検討すれば、いずれも決定的なものは何一つなく、寧ろ有罪を認定する方が極めて疑問であるとするものばかりであることが明らかとなつた。即ち本件白シヤツ附着の血痕については疑問点が存していることは前記のとおりであり、この疑問点が解明されない限り九八・五%という確率は左して意義あるものではなく、更に右確率に基づく推定を認定にまで高めるものとして挙示した諸条件は、いずれも否定ないし消極的に解されるべきものであり、犯行の動機についても原二審判決の認定には証拠上首肯できないものがあるのである。(因みにこの動機について〔己〕を真犯人とした場合原審がその挙示する証拠により認定するとおり、同人は本件発生当時ヒロポンを常用し昭