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ばならないと友人の間を歩くのは不思議な点であり、偶然にその家に行つて聞いて来るのが一寸解せない位早い」旨の供述であるが、このことからどうして「興味」とか「偽善的」「博愛主義的傾向」とかいう評価がでてくるのか首肯できない。

(ホ) 原二審判決が挙示した前記(イ)、aの部分(同鑑定五枚目表)の根拠は、前記⑵において検討した那須の言動ならび〔乙4〕の「法律や医学の常識的知識が豊富であるが、犯罪の話に明るい」とか「証拠を残さず犯罪を行うことができるなどと云つている」とかいうことであるが、その評価については、右aの解釈のほかにも反対解釈の余地があるのにその検討がなされていないのは不十分である。
(ヘ) 原二審判決が挙示した前記(イ)、bの部分(同鑑定六枚目表)は、友人などの那須は女の話をすると軽蔑するようなけがらわしいというような態度をしておつたから謹厳な男だと思つていたという供述を引用しつつ、これに対し「内面的には女に対し常人以上の興味を持つて居たものと察すべく、この傾向を強く抑圧する結果反動として表面的には謹厳な人と見えただけのことである」と判断して、右bの帰結に至るのである。しかし女の話の内容も明らかにせず、しかも「常人以上」とした根拠は首肯できない。
(ト) 同鑑定八枚目裏の「精神における分裂的傾向、両極的相反性傾向、所謂二重人格的傾向等はいづれも相当顕著で」「これらは広義の変質的傾向と見て差支のないものである」としているの