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るのか、冗談の過ぎたものなのか記録上は判定困難である。

⑶ 原二審判決が変質的傾向とみられる性行の一つとして判示するところの「強て新婚の友人夫婦と同室に寝たり」するということについては、那須が友人である〔乙4〕夫婦の許に度々泊るということを指すものと解されるが、これについても那須がそれは〔乙4〕の方ですすめるままに泊るのであり、しかも同人方には寝られる部屋が三つもあり、二階もあるが、夫婦の部屋に一緒に寝るようにすすめるからだと弁解しているのであつて、これを排斥する証拠もない。
⑷ 原二審判決は、夫不在中の他人の妻を訪ねて食事したりすることをも指摘しているが、それは〔乙4〕の妻〔乙5〕の姉〔乙6〕に関することであると解されるところ、那須が〔乙6〕を知つた時期は昭和二四年八月九日頃で、その頃〔乙6〕が同棲していた男との間に別れ話が持ち上り、〔乙4〕の先輩である那須に〔乙4〕を通じて話合の仲介を依頼してきたので、これに応じて両者の仲に入り尽力したりした。そして同月一五、六日頃〔乙6〕方を訪ね夕食を馳走になつたところ腹痛を起し同所で暫く休んだが、夫不在にも拘らず同女から泊るように云われてその言に甘んじて泊つたのであつて、別段同女に乱暴を働いたとか、情交を迫つたこともなかつたのである。したがつてこの事実から那須の変質的傾向を看取することはできない。原二審判決は、原一審証人〔乙6〕の供述記載中「事件後私方へ那須が来て泊つた時よく眠らなかつたようで、夢でも見たのか大変うなされていたので、今起してやろうかと思つた程であつた。何だか人が死んだ夢をみたり、松永宅の現場を廻る夢をみたりしたそうであつた」旨の部分を有罪認定の一証拠として挙示しているが、