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Page:Retrial decision of Hirosaki incident.pdf/64

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を依願退職し、警察官の募集を待ちつつ林檎店の事務員や種苗店の外交員などをして働いていた。しかし昭和二三年夏頃から本件犯行により逮捕されるまでの間は定職がなく、自宅において耕作、掃除等家事の手伝に従事していた。そして同人に対する知人、友人、雇主、近隣の者らその家族らの評価は、真面目、努力型、仕事熱心であり、また温順にして親切で近所の世話をよくし、頭脳は明断であり、博学であるが自説を曲げない強情さや勝気な一面がある。金銭に関しては不正はなく、強情さがなければ模範的である。女の話に対しては穢わしいという態度をとるが、犯罪の話には興味をもつているようであるといつたものであつた。

⑵ ところで犯罪に興味をもつという点については、例えば那須は紙一枚でも人を殺せるとか、人に気付かれないで部屋に入る方法とか、音を立てないで歩く方法とかを話し、また音を立てずに歩いてみせたり、さらに手の平を刀のようにして咽喉を殴れば倒すによいとか、泥棒はタンスを下の方から開けるとか話したり、空手や忍術の話にも関心を抱いていたことが認められるが、これらは同人の本とか人から聞いたことなどの請け売りであり、しかも当時は警察官になることを強く希望し、また定職がなく時間をもて余していた頃であつたからそのような話題に耽り、或は実演してみせたりすることがあつても、これをもつて正常を欠くとまではいえず、もとより直ちに変質的傾向に結びつけることには飛躍がある。
  〔乙4〕は、寝ているとき那須から立膝をして首を絞めつけられ、翌朝同人から寝首をかかれても判らないよと云われたことがあることを原一審公判で証言しているが、それが異常性格に由来す