Page:Retrial decision of Hirosaki incident.pdf/61

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 「問 那須を検挙してから同人のシヤツに血痕がついているのを発見して同人にその理由を尋ねたことがあるか
  答 私としては尋ねたことはありません、誰か尋ねたかも判然したことは判りません
  問 これに対し那須は血がついていないのだからその理由は知らないと云つたことはないか
  答 私は知りません
  間 那須にそのシヤツを見せたことはあるか
  答 私としてはありません」
  本件捜査にあたり極めて重要な証拠物である本件白シヤツの血痕について、捜査の第一線に立つ重大な責任を負つている者が、全く無関心といつてもよい程の関心しか示していないということは解せないことである。同証人は原一審においても「本件白シヤツやズツク靴の領置されたことだけは知つているが、〔丙4〕や〔丙9〕部長が知つていると思います」と述べて、本件白シヤツのことを聞かれると、いかにも責任を回避するような口吻に聞きとれる供述をしているのである。
  原二審における証人〔丙〕の問答をみると
 「間 松木博士に対する鑑定嘱託書は証人が書いたものか
  答 私が書いたように記憶しています
  問 シヤツについたものは人血だということは判つていたか
  答 既に松木博士の試験により人血だということが判つていたので人血と書いたのです」