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いては、すべて人血反応を認めることはできないという鑑定結果を報告した。ところが〔丙3〕、平嶋鑑定が着手される直前においては原審も認定するとおり本件白シヤツの前面およそ一一箇所に「褐色ないし赤褐色」の色合いをもつ斑痕が存在していたことが認められる。即ちこの両者の間に斑痕の色合いについて「帯灰暗色」と「褐色ないし赤褐色」という色合いの違いが認められるのである。

  原二審証人古畑種基の供述記載によれば、右斑痕の色調の相違は、色調の判定についての相違に基づくものであるとしているが、同証人は引田教授が検分した際の色調を同教授について調査したわけではないのであるから、同教授のいう「帯灰暗色」と右証人のいう「褐色ないし赤褐色」とが同一の色調であるということにはならない。殊に引田教授は前述のとおり浴衣の斑痕については褐色という色合いの識別をしているのである。原一審証人〔丙9〕は那須方において差押えたとき本件白シヤツに血痕様のしみが附着していることを見届けたと述べているが、右証言は色合いについてふれているわけでなく、同時に押収した前記物件中にも「しみ」の附着しているもの数点があり、これらの「しみ」も血痕ではないかと疑つて鑑定を嘱託しているのであるから、同証人のいう「血痕様」を直ちに「褐色ないし赤褐色」の色合いを証言しているとみることはできない。他にこの色合いの違いについて、これが同一色調であるとするに足る証拠はない。
  今仮にこれを「褐色ないし赤褐色」の色合いをもつた斑痕であつたとするならば、那須とみ、同〔丁3〕は前記のとおり本件発生の頃以後本件白シヤツを洗濯した記憶はないのであり、那須が作業用に着用して大気の下に曝らしていたことがあつたとしても一か月は経過していなかつたのであるか