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載部分も有罪認定の証拠とするには不適切というほかはない。

⑹ まとめ
  以上を要するに、前記確率を積極的に支持するものとして原二審判決が挙示するところの前記(イ)、(ロ)、(ニ)、(ホ)の諸条件は右に認定したとおりすべて採用し難い諸条件であることが明らかでである。
4 本件白シヤツの血痕について
⑴ 本件白シヤツは、昭和二〇年中の戦後間もない頃那須が大湊に赴いた際偶々貰い受けたもので、そのときに既に中古品でありしみも処々についており、母とみおよび妹〔丁3〕において何回となく洗濯をしてきたが、本件発生の頃以後洗つたという記憶はなく洗濯をした際に、貰つてきたときからついていた汚点のあることは判つていたが、血痕様の汚点については気が付かなかつた。那須は貰い受けた以後これを作業用として本件発生の頃も着用し、昭和二四年八月二二日には午前八時頃からこれを着て自宅庭の松の木の手入れをしていたところ、警察官から弘前市警察署まで来るように云われたため、同シヤツを脱いで同人方玄関から入つて右側八畳間の東側に接した六畳間の鴨居に打ちつけてあつた衣服掛けにこれを掛けて着替えのうえ、同署に出頭したが、その後同日午後四時一五分から一時間にわたつて警察官により家宅捜索がなされ、本件白シヤツが右衣服掛より押収されたもので、日頃は物置小屋の傘などが置かれている入口のところに掛けて、松の木の手入れをするときにこれより出して着ていたものであつた。