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b 同人の司法警察員に対する同年九月八日付第二一回供述調書中の「私はこれまで殺人事件で色々取調をうけているが、私の記憶のない点と証人のことで困つている。裁判の結果無期懲役になろうが何うなろうが裁判長の認定に委せる。控訴する気持はない。」旨の供述記載
c 原一審証人〔丙2〕の供述記載中の「本件発生後満一月目の晩夕食後一応取調べたいと思い被告人の所へ行くと、被告人は今晩だけは何も聞いてくれるなと言つた。被告人は悲愴な顔をして月を眺め頭を垂れて取調べないように言つた。」旨の供述記載部分がある。
(ロ) そこで右各供述の趣旨を検討すると
a 右(イ)、aの供述記載部分は、その供述調書をみると「八月六日は午後七時三〇分頃自宅を出てから公園に月をみにいつた。午後一〇時二〇分頃帰つて寝た」と述べ、次いで「右時間の点は不確かである」と述べ、さらに「よく考えてみると同日の午後一〇時二〇分には家に帰つていた」と繰り返えし述べた後の供述記載であるから、それが犯行の嫌疑を容認した態度を示したものとするには疑問がある。原一審で取調べた丙作成の「所感」と題する手記によれば、右挙示の供述は係捜査官から「君が捜査の立場になつて逆に考えれば、容疑者よりも他人の証言を信用しないわけにはいかないだろうと詰寄られ、それは自分が取調べの立場なら或程度は信用するという風にいつたのが、私が自ら認めたことであるという風に書れた。それは立場を逆にした時である旨の了解と妥協のつもりと、自分が知つたことでないからそんなものはどうでもよいという気持でいた。」と弁解しており、右調書の供述録取者と同一人の録取にかかる那