Page:Retrial decision of Hirosaki incident.pdf/51

提供:Wikisource
このページは校正済みです

審判決の挙示する(ハ)の条件は、それほど確実性のあるものではない。

⑷ 目撃者について
  原二審判決は、目撃者として原一審証人〔乙12〕、同〔乙13〕、同〔乙14〕、同〔乙15〕、同〔乙16〕、同〔乙17〕、原二審証人〔乙11〕の各供述記載を、また那須の歩き方は内股で特徴的であることを証するものとして、原一審証人〔乙18〕の供述記載を挙示しているのであるが、右目撃者らが、原一審或は原二審で供述しているところは、その男は内股であつたとか、白シヤツ半ズボンを着て白ズツク靴を履いていたとか、丈は五尺四寸位、肩のなで型の格好は那須に似ている、とかいう程度であつて、那須であると特定するまでには至つていないし、又各証人の目撃時間などもまちまちで極めて暖昧である。したがつて右目撃者の証言を那須が犯人であるとするための積極的な証拠とするには非常な疑問がある。原二審判決が挙示する㈡の条件もそれ程積極的な証拠価値のあるものではない。
⑸ 那須の供述について
(イ) 原二審判決が条件の一つとして挙示している那須の供述および関係証人の供述は、
a 那須の司法警察員に対する昭和二四年九月三日付第一回供述調書中の「私が八月六日の夜一〇時(判文中一一時とあるのは一〇時の誤記と認める)二〇分に家に帰つているが、若しそれ以後他の何処かで私を見た人があればそれを認める。又被害者の母が私であるというのであればそれも認める。」旨の供述記載