Page:Retrial decision of Hirosaki incident.pdf/49

提供:Wikisource
このページは校正済みです

い血液反応をそれぞれ認め(イ点については原審認定の理由によりその鑑定結果は採用できない)、右足の靴において、ハ点の斑痕のうちウ点につき人血を認めたのである(ア、イ、オの三点については原審認定の理由により鑑定結果は採用できない。)しかしこの鑑定に先き立ち松木明医師は前記引田鑑定の実施前即ち同年八月二二、三日頃に本件白靴を嘱託に基づき鑑定しているのであるが、同医師によつて作成提出された筈の鑑定書は、原一、二審の審理の過程において問題とされながら、遂に公判に提出されなかつた。

(ニ) 古畑鑑定㈠(昭和二五年九月二〇日付)によれば、いずれの部位においても血液の附着は証明できなかつた。
(ホ) 以上の各鑑定結果を総合して、原決定が「本件白靴には人血痕の附着を証明するものは、なんら存しないことに帰するから、同靴の附着物をもつて請求人の有罪認定の根拠とみることは、当裁判所の採り難いところである。しかも本件白靴を履いて本件犯行現場(離座敷)南側の庭の飛び石を走れば、踵の鉄片から容易に音を発するものと推測され、この点は〔乙2〕の前記供述………とは齟齬を来すところであつて、結局同靴の存在をもつて本件罪証に供することには疑問がある」とする判断は正しい。当審事実取調の結果も右認定を左右するものではない。原二審判決が挙示する(イ)の条件は否定されなければならない。
⑵ 那須方隣家の血痕、隣家から那須方をぬける部分の境界生垣の笹の葉上血痕について
  この点については、前記第二、二、㈡7の項で説示したとおり、これが被害者の血液に由来した