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は当裁判所において付したものである)

3 確率を支持する諸条件の検討

 原二審判決が、那須に対する本件殺人事件について、有罪を認定するに至つた有力な根拠となつたものは、本件白シヤツ附着の血痕が、被害者〔甲〕の血液と同じ血液型の血痕であつたということである。そして同判決は、この血痕が本件犯行によつて附着したものと認定するに当り、べイーズの定理を応用し確率九八・五%の数値を根拠として、これにその挙示する前記(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)の諸条件を認定したうえ、「前記確率を全きものにし、推定を認定に高める他の諸条件が具わ」つたとしているのである。
 そこで先づ右認定の諸条件について検討を加える。

⑴ 白ズツク靴(以下本件白靴という)の血痕について
  この点につき原決定がその挙示する証拠によつて認定するところは、すべて当裁判所においてもこれを首肯することができ、その結論も是認できる。その概略を述べれば次のとおりである(当審事実認定の証拠は挙示するもの以外は、原決定の当該認定事実に挙示する証拠をそれぞれ引用するものである。以下同じ)。
(イ) 本件白靴は、那須の父〔丁2〕が履き古して放置していたものであつたが、那須はこれを昭和二四年七月上旬頃靴修理業〔乙8〕に修理を依頼し、一週間位後に修理を終えて受け取り、以後これを常用し、本件犯行のあつた同年八月六日の頃も履いていた。そして同月二一日午後四時頃弘前