Page:Retrial decision of Hirosaki incident.pdf/46

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く、前記確率を全きものにし、推定を認定に高める他の諸条件が具わるのである。即ち

(イ) 被告人が本件の頃も穿いていたことを自認する白ズツク靴(証第二号)に噴出飛散したB型と思われる人血の細滴が附着していること、
(ロ) 被害者方から被告人方隣家に到るまでの道路上及び隣家宅地から被告人方へぬける部分の境界生垣の笹の葉上に、合計約三十余滴の小さな血液滴跡が発見され、それは全部人血で検定可能のものは皆B型と判定されたこと、
(ハ) 犯人を目撃した被害者の実母〔乙2〕は、被告人を面通しで見た時、被告人が犯人と全く同じであり、卒倒するように感じた程であること、
(ニ) 本件犯行の時刻の前後、被害者方附近で開襟らしい白シヤツを着て半ズボン様のものを穿いたしかも被告人の歩き方の特徴である内股に歩き、殆んど足音をたてない被告人に似た男に出遭つた証人が数人あること、及び
(ホ) 被告人自身も警察で、私は本件八月六日の夜十一時二十分に帰宅したが、それ以後何処かで私を見た者があればそれを認めるし、又被害者の実母が私であるというのであればそれも認める旨、私は記憶のない点と証人のことで困つているが、裁判の結果無期懲役になろうと何うなろうと裁判長の認定に任せ、控訴する気持はない旨自供していること、

等の諸事実が存するのである。
以上を総合して考えると、本件犯行の犯人は被告人なりと断ぜざるを得ない。」としている。(符号