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上次男作成の各鑑定書の記載及び当審第二回公判調書中証人古畑種基の供述記載によれば、被害者〔甲〕の血液はB、M、Q、E型であり、被告人の血液はB、M、q型であること、被告人が本件の頃も着用していたことを自認する海軍用開襟シヤツ(証第三号)に附着している血液はB、M、Q、E型であり、その附着時期は被害者〔甲〕が殺害されて血液が流出した時それが畳表(証第二十二号)に附着した時期と時間的間隔が認められないこと、以上の場合他の諸条件を考慮の外におき、右開襟シヤツの血液は被害者〔甲〕の血液が附着したものであるとみる確率は九八・五%であること、しかるに被害者〔甲〕は総頸動脈を切断されたものであり、右開襟シヤツ附着の血液の大部分は、その位置、形、量からして動脈から送出した返り血をあびたものとみられるから、右の確率は更に大となり、B、M、Q、E型の血液の人が被害者〔甲〕以外に何人あろうとも、その誰かが本件犯行時刻頃被告人の傍に居て、しかもその動脈から血液を噴出させて、被告人の着ていた右開襟シヤツに血痕を飛散させたものであるという立証がつかない限り、右開襟シヤツ附着の血液は被害者〔甲〕の血液であると推定されることが認められる。

⑵ しかるに被告人は、犯行当時のアリバイを主張し、それが次々に崩れるや、当時の記憶は一切空白なりとうそぶき、三転して当夜は外出したことなしと言い、而して問題の海軍用開襟白シヤツ(証第三号)については、血痕の附着している筈なしと強弁するのみで、これに対する合理的説明をなす能わず。
⑶ かくて前記推定を覆すべき証拠は何等ないのみか、却つて後記自判の際の証拠説明に詳記する如