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心の度合いの浅薄さを示すものと思われ、それも単に事件の真偽を確めるという大ざつぱなものでしかなく、那須方から預つた裁判記録は殆んど読んでもおらず、またこれらの知りえた事実を逐一メモしていたというわけでもないごとが明らかであり、それに〔乙26〕が〔己〕と共謀して架空の事実を作り上げる理由も必然性もないことについて、〔乙26〕が右に述べていることは十分に首肯できることであるから、原審が指摘するように「〔己〕の供述内容が〔乙26〕の知識に由来するところなしとはたやすく云い難い」とするところは、極めて疑問であり、にわかに左袒できない。

⑵ 原決定における「東側窓からの見透し」の項で、原審は「犯人が東側窓の下に立ち、室内の様子を窺つたかもしれないということは、犯行直後の捜査においてもかなり明らかにされていたところで、このことは当時新聞記事中昭和二四年八月一〇日付東奥日報に、松永教授が某氏に対して『凶行のあつた離れの窓下の草が一部踏みにじられている点から犯人が侵入口を探し離れの窓から内部をうかがつたものと推定される』と語つた旨の記事が掲げられていることや、原二審および当審証人〔丙8〕の供述記載、当審新聞記事中昭和二四年八月一〇日付東奥日報、同月九日および同月一二日付陸奥新報から、〔丙8〕が本件犯行後警察犬を使つて離座敷東側窓下の草の踏みつけられた跡の臭いを頼りとして、二回にわたり犯人の足取りを追跡したが、これについては新聞記者等において関心を抱いていたところであつたことが認められることによつても窺われる。したがつて右〔己〕の供述するところは、〔乙26〕の入手したであろう資料にかんがみれば必ずしも真犯人でなければなし得ないというほどのものではない」としてこの部分の〔己〕の供述の信憑性に疑問を投げているが、