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のかについては記載がなく、また原審取調の〔丙3〕および平嶋侃一作成の昭和二四年一〇月一九日付報告書によれば、抗人血色素沈降素反応試験は、沈降素の沈降価が酷暑に左右されたのか低くなつて、右各検査対象はすべて疑陽性を呈し、人血とも獣血とも判定できなかつたことが認められる(原審証人船尾忠敬の供述記載によれば、かかる場合通常反応は陰性の意味に解すべきであることが知られる。)。

 だとすると〔丙3〕・平嶋鑑定中右各検査対象につき、B・M型或はB型の反応を呈したとの鑑定結果は重要性を認めない方が妥当である。
⑹ 以上の検討結果を総合すると、〔乙10〕方屋敷内の玄関前敷石上および那須方裏より通じる〔乙29〕方裏の漬物石上にB型の人血痕が、また〔乙10〕方潜り戸の敷居には人血痕が夫々附着していたことが認められるのであるが、これらが被害者の血液に由来するものかどうかということについては直ちに断定し難い。
 原一審検察官は、犯人が所持していたジヤツクナイフの折込み溝に溜つていた被害者の血液が、〔乙10〕方右敷石上に犯人が立止つた際滴下したものとの推測を立てているが、それならば木村産業研究所前から〔乙10〕方までの間はおよそ二〇〇メートル程の距離があるが、その間に現場から木村産業研究所までの場合と同様必ずやいく滴かの血液の滴下はあつて然るべきである。ところがその間には一滴の血痕も発見されず、木村産業研究所前でぶつつり杜絶えていた。これは〔乙10〕方血痕等が被害者の血液に由来するものではないことを明らかに示しているとみるべきであり、それ