Page:Retrial decision of Hirosaki incident.pdf/28

提供:Wikisource
このページは校正済みです

の生垣の南端部分の周囲には、笹藪が繁り、その繁みに隠れて右道路からは望見できないが、右生垣には約二尺位(〇・六〇六メートル位)の間隙があつて、このため〔乙10〕方の笹藪の中を通り、この間隙を抜けると那須方屋敷内に達することができたことが認められる(別紙㈡参照)。

⑵ 鑑定人松木明作成の〔乙10〕方玄関前の敷石上の六滴の斑痕に関する昭和二四年八月三〇日付鑑定書によれば、右斑痕についてピラミドン反応試験、抗人血清家兎免疫血清反応試験が共に陽性を呈し、かつB型であることが、また同鑑定人作成の那須方と〔乙10〕方との境界垣根の附近から採取した小笹の葉上の斑痕に関する同月一五日付鑑定書によれば、右各笹の葉上の斑痕は、米粒の三分の一位の大きさで、赤褐色を呈し、一葉上に一個ないし数個附着していたが、これらはピラミドン反応試験、抗人血清家兎免疫血清反応試験において共に陽性を呈したこと、さらに原一審証人松木明および原二審証人〔丙〕の各供述記載によれば、〔乙10〕方潜り戸の敷居上の斑痕は、松木明において検査したところ、右各反応試験において陽性を呈したことがそれぞれ認められる。
 しかしながら鑑定人古畑種基作成の昭和二六年一〇月一三日付鑑定書によれば、右笹の葉上の血痕様斑痕をとどめているものと解すべき笹の葉一四枚の表裏の各斑痕につき、ベンチヂン、ルミノール各反応試験をなしたところ、陰性を呈し、血液の附着を証明することができなかつたことが明かである。右松木鑑定と古畑鑑定とは時期的相違はあるが、古畑鑑定は、さらに笹の葉の特性にも留意し、種々の事例を設定して検討を加えてみたが、右陰性の反応につきなんら疑念を抱くべきところは見出されなかつたことから考えてみると、笹の葉血痕に松木鑑定には直ちには採用し難いもの