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メートル)のところと認められる。そして東側窓には、同窓を十分覆う大きさのカーテンが取り付けられてあり、また東側窓の敷居下辺の高さは、直下の地表から約四尺(約一・二一二メートル)で、その窓下の地表僅か東寄りには長さ一メートル位、巾八〇センチメートル位の窪みがあり、同所には草が生い繁つていた。

⑶ 〔己〕の身長は、昭和三二年当時約五尺五寸(約一・六六メートル)であり、昭和三四年の測定では一・六八二メートルであつたから、右窓から室内を覗くには十分の身長であつたことは明らかである。
 原二審証人〔乙2〕は「六日の晩は非常に暑かつた。〔甲〕が暑い暑いといつて窓を開けていたが、寝るときは私が全部閉めた」と供述するけれども、東側窓の錠が外されてあるところよりみれば、或は前記のとおり〔乙2〕よりあとから床に就いた〔甲〕が暑さに寝つかれないまま、再び同窓を開けたことも十分考えられる。したがつてもし〔己〕が同窓にかけてあつたカーテンに手をかけて少し開き、爪先立つて室内を覗いたとすれば、その供述するところの「東側窓の下に生えていた草の上に立ち……座敷の中を覗いてみた、部屋の中は薄暗く、右方(北方)はぼやつとしてよくみえなかつたが、三〇秒位覗いているうちに寝ている被害者の頭の部分がみえ、その頭の格好から女と判つた」と述べているところは、当時の状況に照らし矛盾するところがないばかりでなく、右窓下の繁つた草の上に窓から室内を覗く際に踏みつけたと思われる足跡が薄く残つていたという状況は、供述とよく符合する。原審証人〔丙4〕、〔丙5〕の各供述中右認定に副わない部分は、原審と同一の理由によりこれを採用できない。
3 引き戸の施錠