Page:Platon zenshu 01.pdf/863

提供:Wikisource
このページは校正済みです

に從つて其惡亦大なり。故に吾等先づ此事は爲すべきことなるか、將た又た爲すべからざることなるかを熟考せざる可からざるなり。何となれば余は常に道理に導かれざる可からざる性質の者なるを以つて、其道理はよし如何ならんとも、必ず思考したる上、善とするに非ざるよりは、何事も之れを爲すことを得ざるなり。故に今や運命我上に來れりとも、余は此道理を棄つること能はず。而して此主義たるや之れ余は今まで尊敬し、今の尙ほ尊敬する所にして、今若し、他の一層善良なる主義を發見するに非ざるよりは、決して君の同意すること能はずなり。然り、假令多數の力が、余に加ふるに尙ほ一層多くの禁獄を以つてし、財產沒收を以つてし、死を以つてし、或は妖怪談を以つて小兒を威すが如く吾等を威すことありとするも、余は君の言に同意すること能はざるなり。然らば此問題に就いて思考する最良の方法如何ん。或は君の前論に歸へり、一般多數の人々の意見に從ふとせんか、――其或者の意見は之れを採用すべしと雖、或者の意見は之れを度外視せざる可からざるは余の已に言へる所なり。而して余は今や將に死刑に處せられんとするに當り、果して此事を