Page:Platon zenshu 01.pdf/862

提供:Wikisource
このページは校正済みです

君を以つて耻辱とするのみならず、又た君の友人たる吾等を以つて、自ら耻辱と感ずるものなり。而してかの審問の如きは決して之れ有らざりしなるべく、又た若し之れ有りとするも、他に處分するの方法ありしなるべし。而して此の最後の行爲或は見事なる愚行は、全く吾等の怠慢と怯懦とより生じたるものゝ如し。故に若し君は自ら生命を助けんとなし、吾等も亦た何事か善き所あらんには、吾等は君を救ふことを得たりしなり。實に之れ何の難事にもあらざりしを以つてなり。然るにソークラテースよ、あゝ其結果や如何ん、君に取つても、吾等に取つても、實に悲しむべく、又た不名譽の事となり了れり。故に君決心せよ、否な熟考の時は既に過ざたり、必ずや其の決心のあるべきなり。今や爲すべき事はたゞ一あるのみ。此は是非とも今夜中に爲さゞる可からず。若し躊躇する時は、萬事盡く空に歸せん。故にソークラテースよ、余は君に願ふ、余の言を聽き、余の言ふ如く行へ。

ソー 愛するクリトーンよ、若し之れ正しきものならんには、君の熱心や其價値計る可からずと雖、若し夫れ不善なるに於ては、其熱心の大なる