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對たるなり。何となれば凡て是等の人々は皆な、寧ろメレートス及びアニュトス等が目して、彼等の親近の腐敗者及び破壞者となしたる余の爲めに證人たらんとするものにして、單に腐敗されたる靑年のみにあらず――若し腐敗されたる靑年のみなりとせば、或は他に爲めにする所ありしと云ふこともあらん――然りと雖、其未だ腐敗されざる年長親緣の人々も余の證人たるなり。如何なれば彼等は其の證據を以つて又た余を助くるか。之れ眞理と正義との爲めに非ずして何ぞや。何となれば彼等皆な余は眞理を語るものにして、メレートスは虛言するものたることを知ればなり。

アテーナイ人諸君、以上は殆ど余の言ふべき所の辯護なり。されども尙ほ一言云ふべきことあり。恐くは、此に人ありて余に怒れる所ありて心に此く思ふことあらん――若し彼れ自身ならんには、此くの如き塲合、或は之れよりも一層重大ならざる塲合に於ける時と雖、淚を流して或は哀訴し或は歎願せん、彼れ又た法庭に其の子女等を連れ來らしめ、以つて人々の心を動かさんとし、又た親戚朋友の多數をも此處に來らしむべしと。