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人は共に生活する多くの人に由つて利益さるゝよりも寧ろ害さるゝを好むものなるか。法律は君の答へんことを要求す。――何人か害さるゝことを好むものやある。

决してなし。

而して君が余を以つて靑年を腐敗せしめ、又た不良ならしむるものとなすや、余は故意に之れをなすものなりと斷言するか。

然り、余は云はん、故意になすものなりと。

然りと雖君は今ま許容すらく、善人は其隣人を善ならしめ、不善人は其隣人を不善ならしむと。而して此眞理たるや、之れ君の優秀なる智力が、其年齡の若きにも係はらずして能く之れを認知し、余は此の老齡を以つてするも、尙ほ此くも暗愚にして、之れを知る能はず、乃ち若し余の與に生活せんとする所の人は、余の爲めに腐敗されたりとせば、余は素より彼れに害さるべき者なるに、却つて余は彼れを腐敗せしめ、而も又た故意を以つて之れを爲すものなりとするか。之れ君の言へる所にして此事に關しては君は未だ余及び其他何人をも說伏せざる所のものなり。然りと