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の人善く馬を扱ふと雖、他の者にして馬を扱ふに於ては、却て之れを害することはあらざるか。メレートスよ、之れたゞ馬のみに止まらず、又た他の動物に就いても然らざるか。余は云はん、君及びアニュトス、たとひ然りと云ひ又た否と謂はんとも之れ余の關する所に非ず、余は以つて確かに然りと爲す。若し靑年にして單に一人のみの腐敗者を有し、其他一切の人々は皆な之れを敎育進步せしむるものならんには、實に之れ至幸と謂ふべきなり。而してメレートスよ、君は决して靑年に就いて何の考ふることなきは十分此くて證明されたり。君の輕忽なることは此の吿發書中に云へる所の事に關し、毫も注意なきことに由つて十分之れを知るを得べし。

メレートスよ、余は今ま他に質問すべきことあり――乃ち不良なる人士中に生活すると、善良なる人士中に生活すると、果して何れか善なりや、余は云ふ友よ、答へよ。之れ容易に答へ得べきことたるなり。善人は其隣人を善良にし、不善人は其隣人を不善とするに非ずや。

然り。