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たるなり。メレートスは詩人の事に關し、アニュトスは工匠の事に關し、リュコーンは修辭家のことに關して余と爭ひし人なり。而して余は始めに云ひし如く、一時に此の讒搆の一大塊團を除き去ることは之れを望み得ざるなり。嗚呼アテーナイ人諸君、之れ眞理なり、全眞理なり。余は何事をも隱蔽するなく、又た何事をも虛飾するなし。然るに此く飾りなき言語は彼等をして余を嫌はしめしことを知る。されども彼等が余を嫌ふは却つて余の眞理を語るの證たるに非ずして何ぞや。之れ彼等が余を誣ひし所の原因及び理由にして、諸君は此吟味或は將來の吟味に於て此事を發見すべし。

余は此く第一の階級の吿發人等に對する辯證は十分之れを爲せり、今や次に第二の階級の吿發人乃ち善良なる愛國者なりと自稱せる所のメレートスの引率せる人々に對して辯證する所あらんとす。彼等の口供を讀め、大要此くの如きことを含めり、曰く、ソークラテースは惡行者なり、靑年を腐敗せしむる者なり、國神を信ぜずして自家の新なる神を唱道する者なりと。之れ彼等の余に擬したる所の罪名なり。余は今ま逐條其