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ることを爲せり。素より自ら或事を知れりと思へるも、實は知る所甚だ少きか、或は全く知る所なきかの人寡なからずして、其無知なることは容易に看破されしなり。而して彼等靑年に試問論破されたる所の人々等は彼等靑年を怨みずして、余を怨み、而して曰く、此の擾亂者ソークラテース、靑年を謬る所の不良なる指導者と。――若し人ありて彼等に問うて、何ぞや、彼れ果して如何なる惡を實行したりしやと云ふ時は、彼等之れを知らず、之れに答ふること能はざるなり。然るに彼れ敗北と見られざらんが爲めに、彼等一切の哲學者に加へし所の即製の攻擊を直ちに吾等に加へ、吾等を以つて、雲上の事及び地下の事を敎ふる者なり、無神論を爲す者なり、惡をして善と見せしむる者なりとせり。實に彼等は其知識ありとの虛託の看破されしを自白するを好まざるを以つて此くの如きの擧に出づるなり――之れ眞實の事なり。而して彼等は其數甚だ多く、且つ野心あり又た氣力に當み、殆ど戰闘の準備を爲し、又た人を說伏するの辯舌を有し、遂に其高聲且つ執拗なる讒搆を以つて諸君の耳を充たせり。而して之れメレートス、アニュトス、及びリュコーン等の三吿發者が余を攻擊するの理由