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眞否を討究すべし。彼れ余を以つて惡行者なり、靑年を腐敗せしむるものなりとせり。然りと雖あゝアテーナイ人諸君、メレートスこそは眞の惡行者たるなれ。其惡行たる、彼れ嚴肅なる事物を遊戲の如く所理し、自己は實際何の熱心も、毫毛の利害の感をも有せざる事に關し、さも熱心と利害とを感ずる心ある者なるかの如き僞善よりして、輕々しく他人を訴へて審問を受けしむるなり。此事に關する眞理に就いては余は其證明を力むべし。

來れ、メレートス、余は君に關して問ふ所あらん。君は靑年の敎育及び進步に就いて大に心を用ゆる所あるか。

然り、余は大に注意せり。

然らば其敎育者は何者なるやを裁判官に吿げよ。君は必ず知る所なるべし。何となれば君は其の腐敗せしむる者を發見せんが爲めに苦心し、而して彼等の面前に余を呼び出だし、余を責問せんとすればなり。靑年を敎育進步せしむる所の者は果して誰ぞや、之れを裁判官に吿げよ。メレートスよ、君は無言にして、言ふ所なし。寧ろ之れ耻辱にして、余が君