Page:Platon zenshu 01.pdf/795

提供:Wikisource
このページは校正済みです

彼等に問へり。余の彼等に問ふは彼等必ず何事か余に敎ふる所あらんと信じたるを以つてなり。諸君余の言を信ずるか。余は殆ど此事を言ふを耻づ、然りと雖余の言はざる可からざることは、今ま此の處に在る人々にして、彼等詩人の詩に關し、作者たる詩人其人よりも、優りて善く言說し得ざる人は殆ど有らざることなり。之れ詩人なるものは、自己の智慧を以つて詩を作るに非ずして、一種の天才及び「インスピレーション」に由るものたるを示めすものなり。詩人なるものは、卜筮者及び預言者が、又た多くの美麗なる言語を爲し、而も其の言ふ所は自己は之れを解せざるが如きなり。詩人は此くの如きことの其多大なるものゝ如し。而して余の尙ほ進みて觀察したる所は、彼等他の事に於ては、賢ならずと雖、詩の勢力に於ては、彼等は人間中最も賢なるものなりと自ら信ぜることとなす。此くて余は彼等の許を辭し、余が曩に政治家等と談話して、自己は彼等よりも優れるものなりと思ひたると同一の理由を以つて、余は是等詩人よりも賢なりと思ひつゝ歸へれり。

終に余は工藝家を訪問せり。何となれば余は常に言ふが如く、自ら何