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る人なりと雖、其弟今ま此法庭にあり、彼れ此話の眞實なることを證明せん。

余が此話しを此に述ぶるの理由たる、何故に余が此くの如き惡高名を得たるやを說明せんとするにあるを以てなり。余がデルフォイ神女の答言を聽きし時、余心に謂へらく、神の意味せる所果して如何ん、又た此の隱語は如何に解釋すべきやと。何となれば余は大となく、小となく、此くの如きの智慧なるものを有せざることを知ればなり。かのデルフォイの神が余を謂うて世上最賢の人と言ひし其意味果して何處にかある。而して彼れは神なり詐りある可からず、詐るは神性に反す。而して余沈思熟考之れを久うして此疑問を試驗するの一法を考案せり。余心に謂へらく若し一人なりとも余よりも賢明なる人を發見することを得ば、余は手に攻擊を持して神社に參詣して神に向つて此く云はん、『余よりも賢こき人此こにあり、然るにイマシ御神は余を以つて至賢の者との玉へり』と。是に於て余は知識を以つて有名なる或人を訪問せり、其の人の名は此に云ふの要なし。而して余がこゝに試驗せんとして撰擇したる人は政治家なりしが、其の結果は要するに此くの如くなりき。――彼れ多數の人々より智