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と雖尙ほ一層危險なる輩は、諸君等の尙ほ小兒なりし時、其虛欺を以つて諸君の心を奪ひ、此一個のソークラテースを目して賢人なりとし、上は天を伺い下は地を探り、惡をして善良なる道理あるが如く見せしむることを爲すものなりと言ひ播むる者なりとす。是等の誣吿者は余の最も恐るゝ所なり、何となれば彼等は此虛說の傳播者にして、之れを聞く者をして、此種の投機者は諸神を信ぜざる者ならんと想像せしむるに至るものなればなり。此虛說傅播者は其數甚だ少なからず。而して其余を罪するや久しき昔よりの事にして――諸君等尙ほ靑年たり、小兒たり、而して彼等の言は諸君の心意に印象し易き時、――或は何者も答辯するものなく、訴訟は闕席裁判を以つて進行するを得る時に、彼等は余を罪し始めたり。而して其內最も强硬なるものは、意外なる滑稽詩人の事件の他、余は彼等の名を知らず又た語ること能はざるなり。然りと雖是等誣吿者の大部分は嫉妬及び惡意よりして諸君の感情に訴ふるものにして、其內或者は自ら信ずる所ありて、其所信を他人に傳ふることを爲せり。余は云ふ是等の人々は最も所置に苦しむものなりと。何となれば余は是等の人を