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盡く此に呼び出して之れを吟味すること能はず、余は余の自衞の爲めに、たゞ影と戰い、何人も答ふる者なくして之れを吟味せざる可からざればなり。諸君は、余を以つて二種の反對者を有せるものと見んことを願ふものなり、――即ち一は近來のものにして、他は昔よりのものたるなり。而して余が先づ、昔よりの反對者に答ふるは、正常なる順序なりと、諸君の承認せんことは余の希望する所なり。何となれば是等の誣吿に就いては、諸君は他の者よりも長き以前に、且つ一層數々聽きし所なるべければなり。

扨て余は今ま短少なる時間を以つて、諸君が余に對して爲したる長年月間の讒誣を一掃せんが爲めに辯證を試みんと欲す。而して若し此の事諸君及び余に宜しくして、余の言ふ所若し諸君の愛を受くるに足るとせば余の辯證の成功せんことを希望す。然りと雖之れを爲すは容易の事に非ず、――余は能く此事の性質を熟知せり、故に余はたゞ之れを神意に任せ、法律に從ひて辯證する所あらんのみ。

余は事の始めより論じ、而して余に對する誣吿を起こすに至りたるは何事ぞや、又た何事かメレートスを激勵して余に反對するに至らしめし