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き言語を使用するの習慣あるものなるが、今まこゝに余の辯證を爲すに當つても、亦數々之れと同樣なる言語を用ゆることあるべければ、諸君は之れを聽きて之れに驚くことなく、余の辯證を妨害することなからんこと之れなり。余の齡今や七十を超えたり、而して法庭に出でたるは始めてなるを以つて、法庭に出でゝ言行するの作法を知らざるなり。故に諸君は余を見るに、外國人が自國の言語を使用するも、諸君は之れを寬假するが如くせんことを願ふものなり。而して之れ無理の願に非ざるべしと信ず。决して余の作法の善惡を問ふこと勿く、たゞ余の辯論の正義のみを旨とし、此點に注意し、裁判官は正しく裁判し、辯論者は眞實を語ることを爲すべきなり。

余は先づ以前より余を罪し咎めたる者、及び第一種の吿發人等に答へ、以つて漸次に其後の者に及ばんと欲す。實に余は數多の誣吿者ありて久しき以前より余の罪を云ひ、其誣吿は數年に亙れるなり。余はアニュトス及び其徒を以つて危險なる者なりとすと雖、彼等は又た其一種の手段を有せるを以つて、アニュトス等よりも又一層恐るべき者となす。然り