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切の知覺作用は起こらざるべしと云ふことを思ひ得て爾後一心不亂に物體の運動にのみ其の思索を注ぎたりとぞ。而して茲に彼れは其の哲學の根本思想を得たるなり。彼れに從へば、凡べて存在するものは物體なり、凡べての出來事は物體の蓮動に外ならず。謂はゆる心的現象も究竟すれば物體の運動なり。而して物體の運動は機械的に必然なる因果の關係を以て生起するもの也。哲學は此の物體の運動を論ずるもの、委しく云へば、其の運動によりて現象の原因を說明し又其の原因によりて現象の生ずる所以を說明するもの、卽ち結果よりして原因を推し原因よりして結果を知るもの也、而して謂ふところ原因結果も共に物體の運動に外ならずと。斯く考へてホッブスは哲學上吾人の考覈し得べき範圍內の一切の現象は皆機械的に說明し得べきものなりとし一切の問題を物體及び其の運動より演繹的に考索せむとせり。是れ即ちガリレオの物理說を以て演繹的學術の基礎となさむとしたるものなり。彼れ曾て偶然にもオイクライデースの幾何學を得てこゝに演繹的學術の好模範を發見したりと云ふ。彼れが哲學的思索の專ら演釋的にして數學を重んじたることは彼れをしてベーコンと大に其の趣を異にせ