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ホップスが著書の主要なるものを擧ぐれば千六百四十年 "Elements of Law, Natural and Politic" を作り(此の書は公にせでありしに十年の後著者の承諾なくして "Human Nature" 及び "De Corpore Politico" と題する二書に分かちて出版せらる)千六百四十二年 "De Cive" を著はす(千六百四十七年增補す)。此の書は "Elements of Law" の終はりの部を改作して獨立の一書としたるもの、是れ即ちホッブスが哲學組織の第三部門を成すものなり。千六百五十一年 "Leviathan, or the Matter, Form and and Power of a Commonwealth" を著はす。千六百五十五年 "De Corpore" を公にす、是れ彼れが哲學の第一部門を成すものなり。千六百五十八年 "De Homine" を公にす、是れ彼れが哲學の第二部門を成すものなり。此の二書と嚮に著はしたる "De Cive" を以てホッブスの "Elementa Philosophiae" とす。

《ホッブス哲學の根本思想、及び其の三部門。》〔二〕傳へ云ふ、ホッブス曾て巴里に在り、一日其の地の學者等と會談したりし時感官の知覺の何たるかに關する問題の提出されしに其の座に之れを解釋し得る者のなかりしかば彼れ此の時より切りに此の問題を考索して、竟に若し物體全く靜かにして又其を形成する部分聊かも移動すること無くば一切の辯別、隨うて一