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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/67

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莫、夥多の事實を蒐集せるのみにて其の事實が何故に然るかを討究せずば未だ確實なる法則を發見したりと云ふべからざる事は彼れの能く看取せる所なり。然らば斯くの如きフォーム(例へば溫熱のフォーム)を發見する道如何。ベーコン說いて曰はく、先づ溫熱の存在する數多の事物を集めて一の表を作り之れを積極品となし、次ぎに溫熱の存在せざる事物、但し成るべく積極品に似て唯だ溫熱なき點に於いてそれと異なるものを集めて第二の表を作り之れを消極品となす。さて又溫熱の多少に順ひ種々の事例を列擧して第三表とすべし。斯くして第一表の積極品中に存在するものより其の第二表に通ずるものを除き去り、又第三表に於いては溫熱の多少に比例して多少を爲さざる者を引き去るべし、そは此等は皆溫熱のフォームと見るべきものならねば也。斯くして溫熱のフォームならぬものを除却し行かば遂にそれと見ざる可からざるものに到達すべしと。之れをベーコンの說ける歸鈉的硏究法とす。

《自然界の硏究と其の利用。》〔六〕吾人は斯かる歸納的硏究法を以て自然界を探らざるべからず。されど吾人が斯くして自然界を探りて確實なる知識を得むとする目的は(ベーコンに從