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ることによりて成すを得べし、而して之れを彙めたるもの是れ listoria naturalis なり。ベーコンは自ら此等の事例を集めむとしたれども彼れが此等蒐集の淵源をなせるものは多くは書籍なりき。

事例の蒐集に次ぎて吾人の爲すべきは其を解釋することinterpretatio)なり。解釋とは一現象をしてしかあらしむる所以の者を發見するを云ふ。自然の事物は種々の性質によりて成る、例へば溫熱の如きは一種の性質にしてべーコンの所謂ネチュア(nature)なり。試みに溫熱といふ性質を解釋せむには須らく其をして爾あらしむる所以のものを發見すべし。ベーコンは中世紀哲學より傳來せるアリストテレース學派の用語を用ゐて之れをフォーム(form)と名づけたり。フォーム()は一性質又は一現象をして爾あらしむる所以のものなるが故に其の性質現象の在る所必ず之れあり、之れある所必ず其の性質現象あり。フォームの多く在る所には其の性質亦必ず多く存し、其の少なく存する所には其の性質亦必ず少なく存す。ベーコンは此のフォームを名づけて法則(law)とも云へり。斯く樣々には言ひ做せれど彼れがフォームをいふや未だ全く中世以來の思想を脫却せざる跡歷然たり、遮