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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/666

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るはヂョン、スチュアート、ミル(John Stuart Mill 一八〇六―一八七三)及びハーバート、スペンサー(Herbert Spencer 一八二〇生)なるべし。ミルは種々の問題に關して常にハミルトンと論爭せり。盖し彼れはヒュームより來たれる學脈を引き又コントの思想を注入したるものなり。

スペンサーは其の進化論に基づきて新らしく哲學上の一大組織を立てむとしたる者にして、近時の思想家中最も吾人の注意を値する者の一人なり。彼れは大體に於いて英吉利經驗學派の哲學思想を繼承すると共にダーヰンによりて生物學上大證明を與へられたる進化論に據り之れを以て大は宇宙の成立より地球上一切の事物を說明せむと試みたり。彼れ以爲へらく、吾人の思想は凡べて關係的のものなり、故に吾人は絕對者を知ること能はず、吾人の知り得る所は唯だ現象の界に限らると。かくて彼れは可知及び不可知の境界を別かち可知なる現象の何によりて生ぜしめらるゝか、其の根柢に何物の存在するかは吾人の知り得ざる所なりと說けり。されどスペンサーは現象の根柢は何物かの存在することを否まずして屢〻之れを不可知なる勢力などとも名づけたり。